「1on1」は、ヤフーを始めとした多くの有名企業が人材育成を目的に導入しています。
一方で、「1on1を導入してみたけど、あまり成果が出ていない...」という声も多いです。
成果が出る1on1と、成果が出ない1on1とでは、一体どのような違いがあるのでしょうか?
そこでこの記事では、成果が出やすい1on1の具体的な進め方や質問例、失敗しないためのコツを解説していきます。
1on1とは?

「1on1(ワンオンワン)」とは、上司と部下が1対1で行う個別ミーティングのことです。
多くの場合、1on1は定期的(週1回~月1回ペース)に開催されます。
1on1を行うことで、上司と部下の人間関係の構築や、部下の成長促進に役立ちます。
1on1は1回、15~60分程度で行います。
1on1は上司が部下に教えてもらう場

通常の業務では、上司が部下に仕事の進め方などを教えます。一方で1on1では、通常の業務とは立場が逆転します。
つまり、1on1は「上司が部下に部下のことを教えてもらう場」なのです。
1on1は上司が部下に質問をし、部下がその質問に答える形式で進むので、よく「野球のヒーローインタビュー」に例えられます。
上司はヒーローインタビューのインタビュアーになった気持ちで、部下からたくさんのことを聞き出すことが、1on1での役割の1つです。
上司が自分語りをするのはNG。
1on1の特徴

1on1には次のような特徴があります。
1on1の特徴
- 部下が話したいテーマで話す
- 部下が主体的に話す
- 上司は部下の話を聞く
テーマは業務で抱えている悩みや、キャリア相談などなんでもOK
1on1はVUCA時代に求められている

皆さんは「VUCA(ブーカ)」という言葉をご存じでしょうか?
VUCAとは次の言葉の頭文字をとった造語です。
VUCA
- Volatility(変動性・不安定さ)
- Uncertainty(不確実性・不確定さ)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性・不明確さ)
VUCAは先行きが不透明で、ものごとの移り変わりが激しい現代を表す言葉として広く使われています。
そんなVUCA時代では、必ずしも上司の今までの働き方が部下にも通用するとは限りません。
むしろ、不確実な市場の変化が次から次へと生まれるVUCA時代では、上司1人だけのモノサシだけでは、部下を正しい方向へ成長を促すのは困難です。
そのような背景から、VUCA時代では、部下一人ひとりの環境に合わせて上司と部下が話し合う対話型コミュニケーションの1on1が求められているのです。
VUCA時代は、常に新しい働き方を模索する必要があります。
「今」求められている"人材"

ものごとの移り変わりが激しい現代ではどのような人材が求められているのでしょうか?
VUCA時代では、VUCAに対応できる次のような人材が求められています。
「今」求められている"人材"
- Volatility(変動性・不安定さ)→変化に柔軟に適応できる
- Uncertainty(不確実性・不確定さ)→失敗を恐れずに挑戦できる
- Complexity(複雑性)→自分で答えを考えられる
- Ambiguity(曖昧性・不明確さ)→主体的に行動できる
現代では、上記のようにVUCAに対応できる人材が求められています。
失敗を恐れずに挑戦できる人は強い。
「今」求められている"リーダー像"

VUCA時代に求められているリーダーについても抑えておきましょう。
VUCA時代では、次のようなリーダーが求められています。
「今」求められている"リーダー像"
- 部下と深い信頼関係を築ける
- 明確な目標を示し、部下への動機づけができる
- 部下に主体的かつ柔軟な行動を促せる
一昔前は、短期間で成果を上げやすい「支配型リーダーシップ」が求められていました。
支配型リーダーシップとは、リーダーの強い意思や信念に基づき、組織を強い統率力で牽引するタイプです。
一方で現代では、リーダーがメンバーに奉仕する精神でチームを導く「奉仕型リーダーシップ」が求められています。
リーダーが奉仕型リーダーシップをとることで、メンバーは強い絆で結ばれて、高いパフォーマンスを発揮することができます。
奉仕型リーダーシップは、メンバーのモチベーションも高い。
1on1をするとどうなる?

ここまで1on1が求められる背景について解説してきましたが、このパートでは1on1を行うメリットについて解説していきます。
1on1には次のメリットがあります。
1on1のメリット
- 上司と部下の信頼関係を構築できる
- 部下の主体的な行動を促せる
- 優秀な人材の流出を防止できる
上司と部下の信頼関係を構築できる

1on1を行うことで、部下と上司の信頼関係を構築することができます。
なぜなら、1on1を行うことで、普段の業務だけでは知りえないお互いの考えや価値観を共有することができるからです。
結果的に「言わなくても伝わっているだろう」というコミュニケーションエラーを減らすことができ、職場全体のコミュニケーションを活性化することができます。
信頼関係の構築は生産性を高める上で必要不可欠です。
部下の主体的な行動を促せる

1on1を行うことで、部下の成長を促すことができます。
なぜなら、1on1では目標とアクションプラン(目標を達成するための行動)を、部下自らで決定する必要があるからです。
そのため、今後現れる問題に対しても、問題を解決するためのアクションプランを自身で設定し主体的に行動できるようになります。
また1on1は定期的に行われるので、でPDCAサイクルを高速で回すことができるので、成長の促進が期待できます。
主体的な行動はVUCA時代に求められる能力の1つです。
優秀な人材の流出を防止できる

1on1を行うことで、人材流出を防ぐことができます。
なぜなら、1on1を行うことで部下が上司に悩みを相談する機会が増え、心理的安全性が上がるからです。
仕事で悩みを抱えているけど、誰にも相談することができないという人は意外と多いです。(以前の私もそうでした。)
しかし、1on1は週1回~月1回の頻度で行われるので、定期的に上司に悩みを相談する機会があります。
定期的に上司に悩みを相談することができる場が設けられている環境は、部下にとって心理的安全性が高く離職率を下げることができます。
1on1導入後、離職率が3割下がったというデータもあります。
1on1当日までにしておくべきこと

1on1で成果を出すためには、実は1on1当日までにいくつか準備をしておく必要があります。
準備をおろそかにすると、1on1を行っても臨んだ成果が出ず、ただただ時間を浪費することになります。
1on1当日までにしておくべきこと
- 背景・目的の共有
- スケジュールの調整
- 部下の現状把握
背景・目的の共有

1on1当日までに、上司は部下に1on1を行う背景と目的を共有しておきましょう。
仮に、部下が1on1を受ける背景や目的を全く理解しないまま、1on1を行っても成果は出ません。
部下に背景や目的を伝える際は、上司の1on1にかける思いや熱意などを交えて説明することで、部下の理解度も高まります。
部下のやる気が低いと1on1をしても成果が出にくい。
スケジュールの調整

1on1当日までに、上司と部下で1on1を行うする日程を調整しましょう。
1on1は、週1回から月1回のペースで繰り返し行うので、なるべく続けやすいスケジュールを組むようにしましょう。
続けやすい頻度と時間を設定しましょう。
部下の現状把握

1on1当日までの間に、上司は部下の職場での言動や行動に関心を向けて、部下の現状の把握に努めましょう。
この時、部下の短所を探すのではなく、長所をなるべくたくさん見つけるようにしましょう。
また、可能でしたら日ごろから部下とコミュニケーションをとっておくことで、1on1当日も本音で話しやすくなります。
日ごろから部下の長所をたくさん探しましょう。
1on1の進め方と質問例

1on1の進め方は次の通りになります。
1on1の進め方
- アイスブレイク
- テーマ・現状確認
- 目標設定
- 現状と目標の乖離の要因解析
- アクションプラン設定
アイスブレイク

アイスブレイクとは、本題に入る前に緊張を解きほぐすための雑談です。
アイスブレイクは、1on1における導入にあたるパートです。
アイスブレイクを行うことで、緊張がほぐれ、この後の対話で本音を引き出せるようになります。
1on1の事前準備で部下の長所を見つけている場合は、アイスブレイクで日ごろの感謝とともに長所を伝えてあげましょう。
また、体調を確認する質問なども有効です。
質問例
- 夜よく眠れていますか?
- この間のプレゼン良かったですね。
- お休みの日は何をして過ごしていますか?
テーマ・現状確認

アイスブレイクの後は、話すテーマを確認し、テーマに沿って相手の現状を確認します。
現状を確認し、前提情報を共有することでこの後の1on1をスムーズに進めることができます。
具体的には、そのテーマを選んだ理由や、現在困っていることなどをあらゆる角度から質問しましょう。
質問例
- 今日はどんなテーマについてお話ししたいですか?
- そのテーマを選んだ理由は何ですか?
- そのテーマの進捗はどれくらいですか?
目標設定

現状を確認したら、次に相手が理想とする未来や目標を設定します。
この時、理想とする未来や目標はあくまで、部下に決めてもらうことが重要です。
上司は気付きを与える質問をするのはOKですが、自分の理想を押し付けたり、意図的に目標設定を誘導するような言動はNGです。
質問例
- 1年後何ができるようになっていたい?
- 周りからはどんな風に思われたい?
- どんな変化を望んでいる?
現状と目標の乖離の要因解析

理想とする未来を設定したら、次に現状と理想の乖離を解析していきます。
乖離の原因には、知識が不足している、一緒に作業をしてくれる仲間がいない、上司が挑戦を承諾してくれないなど様々です。
また原因が1つであるとも限らないため、上司はこのパートにおいてもあらゆる視点から質問を投げかけましょう。
もしかしたら、部下も自分でも気づいていないボトルネックが見つかるかもしれません。
質問例
- 目標を達成するうえで1番の障害は何?
- どんな知識や能力があれば達成できそう?
- 過去に似たような経験はない?(あるならその時はどうした?)
アクションプラン設定

現状と理想の乖離の要因を解析したら、目標を達成するためにとるべき行動(アクションプラン)を設定しましょう。
アクションプランは、現状を理想の状態へ近づけるためにするべき行動は何なのかを起点に考えましょう。
またアクションプランを設定するコツは、「何」を「いつまで」に「どこまで」行うといった具合になるべく具体的な行動に落とし込むことです。
質問例
- 目標を達成するためにまず何から始める?
- 今一番やりたいことは何?
- どの順番で取り組むのが効果が高そう?
1on1で絶対にやってはいけないこと

実は1on1には、絶対にやってはいけないことがあります。逆に言えば、この絶対にやってはいけないことさえやらなけらば、1on1で失敗することはありません。
1on1で絶対にやってはいけないことがこちらになります。
1on1で絶対にやってはいけないこと
- 上司の考えを押し付ける
- 上司がすぐに沈黙を埋めようとする
- 1on1を定期的に行わない
上司の考えを押し付ける

1on1で絶対にやってはいけないことの1つ目が「上司の考えを押し付ける」になります。
1on1は、質問を通じて部下がやりたいことを見つける場なので、上司の考えを押し付けるのはNGです。
部下が自ら「これをやりたい!」と思っとものと、上司に無理やり押し付けられたものでは、そのあとに行動する際のモチベーションも大きく変わってきてしまします。
自分で決めた行動のモチベーションは高い。
上司がすぐに沈黙を埋めようとする

1on1で絶対にやってはいけないことの2つ目が「すぐに沈黙を埋めようとする」になります。
1on1に慣れていないと、沈黙に耐えられず、上司が矢継ぎ早に話をしてしまうことがあります。
しかし、1on1では沈黙を埋めようとする必要はありません。
なぜなら1on1の世界では、「沈黙=思考を巡らせている」と考えられているからです。
上司は、部下が沈黙しているときは、「部下が新たな気づきを得ようとしている」と思うようにし、無理に沈黙を埋めるのはやめましょう。
1on1において沈黙は怖くありません。
1on1を定期的に行わない

1on1で絶対にやってはいけないことの3つ目が「1on1を定期的に行わない」になります。
なぜなら、1on1は1度行っただけでは期待した成果は出ないからになります。
言い換えれば、1on1は繰り返し行い、PDCAサイクルを回すことで、高い成果が見込めます。
長期的に行うために、1on1は上司と部下双方に無理のない、時間と頻度を設定するようにしましょう。
1on1は1回やっただけでは効果が出にくいです。
1on1をオンラインで行う際の注意点

1on1は相手と直接顔を合わせて行うオフラインで行うのが基本ですが、teamsなどの通話アプリを使って、オンラインで行うこともできます。
オンラインで1on1を実践する際は次のことを意識しましょう。
1on1をオンラインで行う際の注意点
- 声を出さないあいづち(うなづく)を意識する
- 視線に注意する・カメラ目線を意識する
- カメラオンを強要しない
上記の注意点はあるものの、オフラインの1on1もオンラインの1on1もさほど変わりません。
先ほど説明した1on1の進め方に沿って行えば必ず成果はついてきます。
まとめ

この記事では、成果が出やすい1on1の具体的な進め方や質問例、失敗しないためのコツについて解説してきました。
今回紹介した方法を実践することで、上司と部下両方にとって有意義な1on1を実践できるようになります。
ただ、1on1は部下一人ひとりのおかれた環境や個性に合わせて、ブラッシュアップしていく必要があります。
いきなり100点を目指そうとせずに、回数を重ねるごとに改善を繰り返すことも忘れないで下さい。
このサイトにはこの記事以外にも1on1に役立つ記事が数多くあるので、良ければほかの記事も参考にしてみ下さい。