職場の部下に対して「なかなか成長しない」、「もっと主体的に行動してほしい」、「何を考えているのかわからない」等の悩みを抱えている方は意外と多いのではないでしょうか?
そのような悩みを抱えている方に試してみてほしいのが「コーチング」です。
この記事では、コーチングの基礎知識と、ビジネスで利用する際の押さえておきたいポイントを解説していきます。
コーチングは目標達成の手段

コーチングとはクライアントを目標達成(理想の状態)へ導くための手法のことです。
コーチングでは、コーチはクライアントへ質問を投げかけることで、新たな気づきを与えて成長を促します。
コーチングを行う人を「コーチ」、受ける人を「クライアント」と呼びます。
コーチングは「答え」を教えない

コーチングではクライアントが目標達成するための「答え(具体的な行動)」を教えません。
あくまでも、新たな気づきを与える質問を、様々な角度から投げかけるだけです。
「答え」はクライアントの中にある

クライアントが求める答えは、クライアントが気づいていないだけで、すでにクライアントの中にあります。
コーチングでは、コーチがクライアントへ様々な質問をして、クライアントの中に眠っている答えを一緒に探索していきます。
決定権は常にクライアントが持つ

コーチングでは、目標や目標を達成するための行動(アクションプラン)を、クライアント自身が決めます。
コーチはクライアントともにそれらを探索しますが、最終的な決定権は常にクライアントが持っています。
コーチングが求められるワケ

ビジネスシーンにおいてコーチングが求められている理由の一つに「社会の多様化」があげられます。
社会が多様化するにつれて、労働環境は著しく変化し、それに伴って職場でも様々な価値観が生まれ続けています。
その結果、職場で上司が部下を指導する際において、上司の当たり前と部下の当たり前には大きな乖離が生まれています。
そのため、これからの時代において、目標の達成や成果につながる行動を上司と部下が一緒に探索していくコーチングが求められているのです。
コーチがいれば怖くない

コーチなしで行動するのは、暗闇の中で、どこにあるのかわからないゴールへ向かって走るようなものです。
そのような状態では怖くて前へ進めなくなるかもしれませんし、ゴールとは別の方向に進んでしまうかもしれません。
一方でコーチがいれば、目標となるゴールを明るく照らしてくれて、クライアントをゴールまで導いてくれます。
コーチは自分が進むべき道を明るく照らしてくれて、一緒に走ってくれる伴走者のような存在です。
コーチングと混同しやすい用語

よくコーチングと混同されやすい3つの用語との違いをおさえておきましょう。
コーチングと混同しやすい用語
- ティーチング
- カウンセリング
- コンサル
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングでは「アプローチ」に違いがあります。
ティーチングでは、目標の達成や成果につながる行動(答え)を相手に直接伝えます。
一方でコーチングでは、相手に新たな気付きを与えながら、目標の達成や成果につながる行動を一緒に探索していきます。
コーチングとカウンセリングの違い
コーチングとカウンセリングでは「目的」に違いがあります。
カウンセリングでは、精神の不調をきたしている問題を取り除くことを目的に行います。
一方でコーチングでは、目標の達成や成果を出すことを目的に行います。
コーチングとコンサルの違い
コーチングとコンサルでは「アプローチ」に違いがあります。
コンサルでは、コンサルタントの知識・経験をもとに、提案・アドバイスを行います。
一方でコーチングでは、提案やアドバイスなどは行わず、相手に新たな気付きを与えるような質問を行います。
コーチはあくまで気づきを与えるだけです。
コーチングを受けるとどうなる?

コーチングを受けることで次のようなメリットが期待できます。
コーチングを受けるメリット
- 目標が明確になる
- 主体性が向上する
- 継続率が向上する
目標が明確になる
コーチングを受けることで、目標を明確化することができます。
なぜなら、コーチングを受けることで、自己理解を深めることができ、自分が心からやりたいと思えることを見つけることができるからです。
クライアント自身も気づいていなかった「本当にやりたいこと」、「人生の目標」に出会うことができます。
主体性が向上する
コーチングを受けることで、目標に向かって主体的に行動することができるようになります。
なぜなら、コーチングでは目標を達成するための行動を、全てクライアント自身が設定するからです。
誰かに言われてやることよりも、自分でやると決めたことは何倍も成果が出やすいです。
継続率が向上する
コーチングを受けることで、継続率が向上します。
なぜなら、コーチングを定期的に行うことで、コーチから適切なフィードバックをもらうことができるので、1人で行動したときよりもはるかに目標に向かって継続して行動することができます。
コーチングを受けるとモチベーションも維持できます。
コーチングの進め方

コーチングは基本的に1対1で行います。また、可能ならオンラインではなく、オフラインで対面で行うのが望ましいです。
コーチングの進め方は次の通りになります。
コーチングの進め方
- 現状を確認する
- 理想とする状態(目標)を設定する
- 現状と理想の乖離の要因を解析する
- アクションプランを設定する
現状を確認する
コーチングでは最初に相手の現状を確認します。
現状を確認し、前提情報を共有することでこの後のコーチングをスムーズに進めることができます。
具体的には、相手が今困っていることや、不満に思っていること、人間関係や業務内容などをあらゆる角度から質問しましょう。
質問例
- やりがいを感じる仕事は?
- 今までで一番うれしかった経験は?
- 今挑戦しようと思っていることは何?
理想とする状態(目標)を設定する
現状を確認したら、次に相手が理想とする未来や目標を設定します。
この時、理想とする未来や目標はあくまで、相手に自分の意志で決めてもらうことが重要です。
コーチは気付きを与える質問をするのはOKですが、自分の理想を押し付けたり、意図的に目標設定を誘導するような言動はNGです。
質問例
- 1年後何ができるようになっていたい?
- 周りからはどんな風に思われたい?
- どんな変化を望んでいる?
現状と理想の乖離の要因を解析する
理想とする未来を設定したら、次に現状と理想の乖離を把握し、乖離してる原因を解析していきます。
乖離の原因には、知識が不足している、一緒に作業をしてくれる仲間がいない、上司が挑戦を承諾してくれないなど様々です。
また原因が1つであるとも限らないため、コーチはこのパートにおいてもあらゆる視点から質問を投げかけましょう。
もしかしたら、相手も自分でも気づいていないボトルネックが見つかるかもしれません。
質問例
- 目標を達成するうえで1番の障害は何?
- どんな知識や能力があれば達成できそう?
- 過去に似たような経験はない?(あるならその時はどうした?)
アクションプランを設定する
現状と理想の乖離の要因を解析したら、次にとるべき行動(アクションプラン)を設定しましょう。
アクションプランは、現状を理想の状態へ近づけるためにするべき行動は何なのかを起点に考えましょう。
またアクションプランを設定するコツは、「何」を「いつまで」に「どこまで」行うといった具合になるべく具体的な行動に落とし込むことです。
質問例
- 目標を達成するためにまず何から始める?
- 今一番やりたいことは何?
- どの順番で取り組むのが効果が高そう?
コーチングを行う時間と頻度

コーチングは1回15分~60分程度を1週間~1か月に1度行うのが理想です。
上記の時間と頻度を基本として、継続しやすい環境を整えておきましょう。
コーチングは1回やっただけでは高い成果は望めません。
無理なく定期的にコーチングを行うことができる時間と頻度を設定するようにしましょう。
対面が厳しいならオンラインミーティングも検討しましょう。
コーチが持つべき視点

コーチングではコーチは次の3つの視点からクライアントと向き合う必要があります。
コーチが持つべき視点
- Possession(身につけるもの)
- Behavior(行動)
- Presence(考え方・価値観)
この3つの視点は「PBPの視点」と呼ばれています。
Possession(身につけるもの)
Possessionの視点とは、クライアントが「どのような知識や能力を所持しているのか?」という視点です。
クライアントの持っている知識や能力を棚卸しすることで、目標を達成するための行動を決定するのに役立ちます。
Behavior(行動)
Behaviorの視点とは、クライアントが「目標を達成するための行動は何なのか?」という視点です。
コーチはクライアントの持っている知識や能力を目標と照らし合わせながら、次にとるべき行動を促しましょう。
Presence(考え方・価値観)
Presenceの視点とは、クライアントが「どのような考え方・価値観ならば目標を達成することができるか?」という視点です。
目標を達成するための行動が明確になっていたとしても、クライアントが心の底からその行動が目標を達成するのに必要不可欠だと思っていないと成果にはつながりません。
目標を達成するために必要な行動が考え方・価値観と合致しているかを確認しましょう。
コーチが持つべきマインド

続いてコーチング時にコーチが持っておくべきマインド(考え方)を3つ紹介しておきます。
コーチが持つべきマインド
- Interactive(双方向)
- ongoing(継続性)
- tailor made(個別対応)
この3つのマインドは「コーチングの3原則」と呼ばれています。
Interactive(双方向)
Interactiveとは、「コーチとクライアントが常に対等な立場で対話を行う」という考え方です。
たとえ職場では上司と部下という関係だとしても、上司が一方的に話を進めるのは対等な立場とは言えません。
ongoing(継続性)
ongoingとは、「コーチングを継続的に行っていく必要がある」という考え方です。
コーチングは1回ですぐに効果が出るわけではありません。多くの場合、効果を感じるまでには6カ月以上の継続が必要です。
すぐに効果が出なくても、粘り強くコーチングを継続しましょう。
tailor made(個別対応)
tailor madeとは、「クライアントの個性を尊重し、クライアント1人1人に合った対応を行う」という考え方です。
当たり前のことですが、クライアントごとに価値観は異なります。同じ言葉でも受け取り方はクライアントごとに異なります。
10人のクライアントがいたとすると、10通りのコーチングを行うのがコーチのあるべき姿です。
コーチが持つべきスキル

コーチングを行うコーチには主に次の3つのスキルが求められます。
コーチングで必要とされるスキル
- 傾聴
- 質問
- 承認
傾聴
傾聴とは相手の言葉に耳を傾けて、真摯に最後まで聴く能力のことです。
話を聴いていると、疑問や反論が浮かんでくることもあるかもしれませんが、途中で口をはさむのは傾聴ではありません。
先入観を捨てて、相手の言葉の裏に隠されたメッセージを読み解くことが傾聴では求められます。
コーチングの主導権は、常にクライアントにあることを心にとどめておきましょう。
質問
コーチングではクライアントに対して、様々な切り口で質問をして、新たな気づきを与える能力が求められます。
コーチングにおける質問は、コーチが知りたい情報を聞くために行うのではなく、クライアントの視点を変えて新たな思考機会を創出するために行います。
承認
承認とはクライアントの言動を全肯定し、共感する能力のことです。
本当の意味で承認を行うためには、クライアントと全く同じ境地に至る必要があります。
言葉では「分かるよ」と同調していても、同じ境地に至っていなければ、すぐにクライアントに見抜かれて信用の低下につながります。
コーチングのよくある失敗例

コーチングは目標を達成するための手段ですが、次の場合は期待した成果を得られないことがあります。
コーチングの失敗例
- クライアントが嫌々コーチングを受けている
- クライアントの経験・知識が不足している
- コーチの能力不足
クライアントが嫌々コーチングを受けている
組織(会社)の決まりだからという理由で、嫌々コーチングを受けている人が一定数います。
当然ですが、そのようなクライアントはコーチングを受けても成果が出にくいです。
組織の方針としてコーチングを行う際は、事前にコーチングを行う意義や期待できる効果、メリットの周知を徹底しましょう。
クライアントの経験・知識が不足している
コーチングでは、コーチがクライアントに対して、様々な視点から質問を行い、新たな気付きを与えて、目標を達成するための行動を引き出します。
しかし、クライアントの経験や知識が不足している場合、いくら質問を投げかけても目標を達成する行動を引き出せないことがあります。
そのような場合は、コーチングではなく、ティーチング(問題解決方法を教える)を行い、経験や知識を増やすことを優先しましょう。
コーチの能力不足
クライアントの知識や経験が十分で、コーチングにも前向きに取り組んでいるのに、効果を実感できないことがあります。
「アクションアイテムが曖昧で、何をすればいいのか分からない...」、「目標が自分のやりたいこととズレている...」このように感じるなら、効果を感じれないのはコーチの能力不足が原因かもしれません。
このような場合はコーチの上司に正直に申し出るのも手です。
幸いにも現代では、ネット上で記事や動画でコーチングを学ぶこともできますし、有料ですがコーチを育成するセミナーもあります。
コーチングはすぐには効果が出ない

前パートでは、コーチングのよくある失敗事例を紹介しましたが、実際のところコーチングはすぐに効果が出ることの方が稀です。
ほとんどの人には強力な現状維持バイアスがかかっているので、1回のコーチングでこれまでの習慣を変えるのは至難の業です。
そのためなかなか効果が出なくとも、焦らずに辛抱強くコーチングを続けてみてください。
私のこれまでの経験では、人の習慣を根本から変えるのには最低でも6カ月はかかることが多いので、そのことを胸にとどめておいてください。
コーチングを学ぶ方法

コーチングを学ぶおすすめの方法がこちらになります。
コーチングを学ぶ方法
- Web(YouTube)で学ぶ
- 書籍で学ぶ
- 自分でコーチングを受けてみる
まとめ

この記事ではコーチングを行う方法について解説してきました。
コーチングを行うことで目指すべき目標が明確になり、同時に目標を達成するためのアクションプランも自ら導き出すこともできます。
またコーチングをビジネスに活用することで、主体性の高い人材を育成することにもつながります。
この記事の内容を実践して、自分の理想とする未来をかなえましょう。